ここでは、メールマガジン内で紹介された池田憲章氏の特撮コラム「池田憲章の部屋」、特別にメルマガに登場していただいた著名人による特撮へのコメントをご紹介しています。
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メールマガジン第8号

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          □■ 連載コーナー □■ 
           「池田憲章の部屋」
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【これぞ巨大ロボット特撮。戦えっ、ジャイアントロボ。】
                                 
特撮テレビ「ジャイアントロボ」(1967~68)を製作した平山亨プロデューサーは、原作の漫画家・横山光輝氏と不思議な縁があった。東映京都撮影所の時代劇映画で助監督をやっていた1963年、「週刊少年サンデー」で人気連載中の横山光輝氏の忍者漫画「伊賀の影丸」の映画化が東映で企画され、平山助監督が監督候補になったのだ。
「自分の力ではあのスピード感あふれる原作の魅力を映像にとても移せない。残念だけど辞退したんだ」と10年前、平山プロデューサー本人から伺ったことがあった。映画はベテラン小野登監督が演出し、完成させた。この映画のチーフ助監督が後のTVアニメ「サイボーグ009」、「タイガーマスク」、「バビル2世」を演出した田宮武氏である。
その後、東映は1966年7月、カラー特撮も駆使する忍術映画「ワタリ」(原作・白土三平)を完成して公開、東映自身は特撮もうまく使えて、TVシリーズ化を考えていた。ところが、原作の漫画家・白土三平氏が「映画の狙いが自分の作品とは違いすぎる」とTVシリーズ化にOKを出さず、TV化は頓挫してしまった。
TVシリーズの方は平山亨プロデューサーが担当していて、このまま中止とはいかなかった。もう一人の忍者漫画の人気作家は横山光輝氏だ。横山光輝氏を訪ねて、平山プロデューサーが語る東映の忍者物
TVの原作漫画の依頼に、横山氏は快諾して作業に入ってくれた。
カラーに映えるキャラクター・・・・・赤い仮面をつけた主人公の赤影に青影、白影という飛弾忍者群。カラーTVを意識した設定はサスガだった。
「仮面の忍者赤影」は、1967年4月5日から放送スタート、翌1968年3月27日まで放送される大ヒット。関西TV初のカラー作品で、地方TV局への番組セールスも好調で、横山光輝ワールドのおもしろさを実証した。
 一方、NET(現在のテレビ朝日)の宮崎慎一プロデューサーがTVアニメの企画として横山光輝氏に原作を依頼した「ジャイアントロボ」を局に提案、OKが出ず、宮崎慎一プロデューサーは特撮テレビとして考え直し、平山亨プロデューサーの手に「ジャイアントロボ」は託されることになった。横山光輝氏が描いていたのは、スフィンクスの頭部からインスピレーションをもらったジャイアントロボで、横山氏と「サブマリン707」、「青の6号」で潜水艦漫画とSFメカ漫画の第一人者だった小沢さとる氏が共作して練り上げたデザインだった。小沢氏はメカの絵を描くスピードが速く、「鉄人28号」で船や飛行機のメカがいっぱい出てくると応援で出かけて横山光輝氏をよく手伝っていた。
漫画は「週刊少年サンデー」に横山光輝・小沢さとる連名でスタート、二人とも「仮面の忍者赤影」と「青の6号」のダブル連載で掲載されていた。
 横山氏ならではのアイデアは、ジャイアントロボのコントロールを腕時計型のリモコンで音声で命令するという点で(映像で演じやすいだろうという発想がスゴイ!)、草間大作少年の声紋をコンピューターが声紋登録してしまい、大作の声でなければロボは動かないという設定がナイスで、操縦器のリモコンを持つ人間次第で悪人の手先にもなってしまう鉄人28号にはない、新設定だった。まさに新時代の横山光輝ロボットの誕生だった。
 TVスタッフが加えた宇宙人ギロチン帝王が指揮するBF団という陰謀団も、ジャイアントロボが戦うのが怪獣だったり、宇宙生物、巨大な手の形をしたメカニック・巨腕ガンガー、人間が乗って戦車のように操縦する巨大ロボットの妖獣ライゴン、ジャイアントロボの兄弟のような巨大ロボット・GR2と、多彩な怪獣たちで「ウルトラマン」と互角と言ってしまいたくなるバラエティーさを見せてくれた。
1967年4月から9月まで半年、「キャプテンウルトラ」で巨大怪獣を描いてきた矢島信男特撮監督と殺陣師の技斗の久地明氏は、その成果を「ジャイアントロボ」に結集した。
 久地明氏はジャイアントロボの戦うポーズ全てのアイデアを出し、ぬいぐるみの中に入った俳優土山登志幸氏と腕をどうふるか、かまえるか、重量感はどうすると工夫しながらポージングをして、怪獣との格闘も工夫して巨大ロボットの戦闘イメージを初めて特撮に結晶化して見せた。
 ステージのミニチュア・セットの撮影も多かったが、矢島信男特撮監督は大胆にオープン撮影で青空や雲が浮かぶ実景の空をアオリ撮影でジャイアントロボや怪獣の背景にして、特撮シーンの狭さを解放して
みせた。
 漫画のストーリーとかなり設定が変わり、そのことを平山亨プロデューサーが原作の横山氏に説明すると、「漫画は漫画のおもしろさだし、TVはTVならではのおもしろさでしょう。それでおもしろくなるなら、変更なんて気にならないですよ。漫画の方も負けないようにしなくちゃなぁと笑われて、現場でがんばるスタッフを思って、うれしかった。
よーし、横山先生がおもしろいと思ってくれる作品にするぞ。
先生のファンの子供をびっくりさせるアイデアを出すんだと思ったよ」と10年前、平山プロデューサーは語ってくれた。二ヶ月前、平山プロデューサーに特撮リボルテックのジャイアントロボをさしあげると、じーっとモデルを見て、「特撮が苦労した番組だったな~」と笑顔が浮かびあがった。
(特撮研究家・池田憲章)

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