ここでは、メールマガジン内で紹介された池田憲章氏の特撮コラム「池田憲章の部屋」、特別にメルマガに登場していただいた著名人による特撮へのコメントをご紹介しています。
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メールマガジン第5号

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          □■ 連載コーナー □■ 
           「池田憲章の部屋」
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【心の中が特撮ステージになってしまう ガメラVSギャオス!】

「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995)が初公開された時、特撮&怪獣ファンの間に衝撃が走った。シリアスな鳥状のモンスター、ギャオスが
出現して、日常からみるみる異世界にも似た人類終末(ハルマゲドン)のシナリオが開幕していく、その緊迫感。平凡な若い女性の動物学者
(中山忍)がギャオスの核心(人類を食らい滅亡させる生物であること)をつかんでいくストーリー設計の意外さ。脚本・伊藤和典氏と金子修介
監督の“人類の味方である怪獣ガメラ”をクリアーしながら、モンスター映画として人類存亡の危機まで迫真力を上げたのが何より見事だった
(巨大怪獣で夜空も移動する行動力がそのリアリティーを支えていた)。
樋口真嗣特技監督は練り上げたビジュアル設計によって、スーツアクターが中に入るぬいぐるみのガメラ、ギャオスを使って、CG技術のモンスター以上の存在感と実在感を画面に結晶化させた。ガメラのジェット噴射と回転ジェットの飛行シーンは、CG技術を大胆に使い、人類を守ろうとするガーディアンとしての神秘力をビジュアル化することができた。
 ぬいぐるみだけでなく、手で操作するギニョール・タイプのギャオス、翼をたたみ、まるで弾丸ロケットのような形態になってスピードを上げるギャオスの飛行シーンと、怪獣造形を担当した原口智生氏は、宿命の天敵であるガメラとギャオスの生物感を高めて、樋口演出の迫真力を支えきった。
 ラストの決戦場で、樋口特技監督の大爆発が絶対ほしいという提案に、操演・火薬の亀甲船の根岸泉氏は「画面フレームが吹きあがる炎でいっぱいになりたいんだな」とうなづき、ガメラのパワーになる大爆発を作り上げ、現場の特撮スタッフは、そのプロフェッショナルな火薬エフェクトにふるいたった。ぬいぐるみのスーツでも「やれるのだ!」という確信は、「ウルトラマンティガ」の円谷プロ特撮、平成「仮面ライダー」の新シリーズのスタッフへ飛び火していく。日本特撮の覚醒は、この「ガメラ 大怪獣空中決戦」のガメラ、ギャオスの映像から始まったのだ。ガメラ、ギャオスの特撮リボルテックを対決させ、映画の中のいろいろな対戦シーン、そして名シーンのポーズとプラズマ火球、迫力あるジェット噴射のオプション・パーツやギャオスの飛行ポーズで空中シーンを作ったり、楽しんでほしい。
 特撮リボルテック1体で、ここまで可変ポーズがとれる造形の工夫、特撮を前進させた名怪獣を動かすのは、あなただ!ポージングさせる時、君は特技監督になれるのだ。

(特撮研究家・池田憲章)

■連載コーナー■「特撮リボルテックの輪」

今回の登場は、『すすめ!!パイレーツ』などの作品でお馴染みの
漫画家・イラストレーターの『江口寿史さん』から頂いたコラムです。

【特撮監督になれなかったよ】   江口寿史

「特撮少年」だった。「漫画少年」であるとともに。
中学後半になって「音楽」と「スケベ心」が入ってくるまで、僕という人間は、「特撮」と「漫画」ほぼその二つの成分で出来ていた。ああ過言ではない。もちろん特撮映画は東宝、大映、ちょっとダサかった日活、松竹のものまでほとんど観ていたが、ピークは1966年1月から始まった
TV 番組、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」。「空想特撮シリーズ」と銘打たれたこの3作こそ、そのセンス・オブ・ワンダー、斬新なSF的発想、登場する怪獣、怪人、ガジェットデザインのカッコよさ、全てにおいて特撮ものの最高峰だったと今でも疑わない。

毎週放映の日にはいそいそとお絵描き帳と鉛筆を手にテレビの前に陣取り、(ビデオなど当然ないので)その週の怪獣を前から横から後ろから細部までスケッチ。その後、その絵を元に厚紙で怪獣の人形を作るのである。
立体ではなく平面の紙人形だが、手足はハトメで止めた可動式。口も開くし目玉もギョロギョロ動くようにした。欲しがる友だちに自慢げにあげたりした。
作るプラモも怪獣ばかり。背景をジオラマ風に手作りして悦にいったりしていた。「ウルトラセブン」の終わり頃には自分でデザインした怪獣が500体を超えていた。自分の中で「特撮」が「漫画」を完全に凌駕していた数年間だった。
完全に将来は特撮映画を作る人、すなわち円谷プロに入るのだと夢見ていた。

あれから40ン年。気づいたら僕は漫画家になっているじゃないか。
特撮監督にはなってない(なれてない)じゃないか。
まあいいさ。タイミングと無責任でどう転がるかわからないのが人生だ。
それでも自分の中の「特撮」心は完全に消えたわけじゃなく、折々のSF映画に刺激され、それは顔を出してきた。「スターウォーズ」に。「エイリアンに」。
「ブレードランナー」に。「平成ガメラ」に。
CGが驚くべき進化を遂げ、もはや人間の頭で想像したビジョンはほぼ100%映像化可能となった。だが、それに反比例して「特撮」心のときめきがなくなってきたのは皮肉だ。

「特撮」とは工夫する心だと思う。妄想を具現化するために創意工夫する精神。
僕は「特撮」にその精神を学び、今日でもそれは、ジャンルは違えど漫画家としての自分にも大きな糧になっていると思う。「特撮リボルティック」のフィギュアを手にした時、カッコイイ動きを実現するための創意工夫がこの小さなサイズの中にぎゅうぎゅうに詰まっている
ことに驚いた。まぎれもなくこれは「特撮」の精神を継承している人たちが作ったモノだと嬉しくなった。
久々に僕の中の「特撮」心がソワソワと蠢いた。

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◆ 江口寿史さんプロフィール
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江口寿史
漫画家・イラストレーター。昭和31年熊本生まれ。
代表作に「すすめ!!パイレーツ」「ストップ!!ひばりくん!」
「キャラ者」など。

公式サイト
↓↓↓
http://www.kotobuki-studio.com/index.html
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